西南女学院大学 人文学部英語学科教授 太田かおり先生との意見交換会

令和6年2月19日

西南女学院大学 人文学部英語学科教授 太田かおり先生(教育学博士)と冷牟田理事長、白尾常務理事の教育に関する意見交換会を開催いたしました。

(以下対談内容抜粋)

白尾常務理事

国を挙げて英会話のレベルを向上させようとする取り組みが進んでいるようです。

高等学校でも英検準2級合格50%を目指す目標を掲げており、今後は60%の合格率を目指すと聞きました。小学校、中学校から英語教育を取り組めば、目標の達成に近づくでしょうね。

 

 太田教授

 中間市教育委員会でも、中学校に入学してすぐの試験で英語の点数が伸び悩んでいるとの相談を受けた際に、小学校の学習がベースとなり、重要であることをお伝えさせていただきました。

 

 冷牟田理事長

 私は、現在の教育で矛盾に感じているところがあります。子供を良い大学に行かせたいと思う保護者の方の中には、中高一貫校に通わせたいと思う方も多くいます。多くの中高一貫校では受験科目に英語がありません。受験科目である算数や国語に力を入れるために、幼少期には英語を勉強していても忘れてしまうこともあるような気がします。私見ですが、中学受験でも英語の受験科目があるべきだと考えます。

 

太田教授 

 冷牟田理事長の仰られる通りだと思います。2020年から本格的に小学校で英語教育が始まり、5年生と6年生では教科となったため、成績評価も当然ありますので、中学受験で出題されても何ら問題がありません。一部私立校では入試科目としているところもあり、今後増えていくと考えています。

 

 冷牟田理事長

 しかし、最難関校と呼ばれる中学校の校長先生の話では、英語よりも国語、日本語が大切で、小学校入学前から保護者が読み聞かせ、自分でも本を読むことをすべきであるとのことでした。つまり、試験問題は日本語で書かれており、その読解力があるかどうかを問われているそうです。英語は後々、勉強すればよいとの考えなのでしょう。太田先生はどのようにお考えになられますか。

 

 太田教授

 本当に国語は大事だと思っています。小学校、中学校でも英語を教えたことがありますが、成績の良い子供達を見ていると現代国語の偏差値の高い子が多いようです。やはり言語力が大切で、現代国語ができない子は英語力が伸びにくいのです。

 

 冷牟田理事長

 模擬試験や受験での英語の問題を見ますと、出題者が求めている答えが学術的であるものも多いです。英語というよりも日本語の理解力や表現力ができないと話にならないのではないでしょうか。

 

 太田教授

 昨年の京都大学の二次試験の和訳は内容がとても哲学的で難問であり、日本語のセンスが問われています。日本語教育はとても大切です。

 冷牟田理事長

 「数学を勉強して何になる」という方も多くいますが、数学的な論理的思考能力が重要であって、これを理解するのも伝えるのも、言語力であると思っています。

 学校の先生自ら生徒にそれぞれの教科の素晴らしさや、楽しさを伝えていく。そして興味を持たせる。子供たちが納得して勉強する。それこそが大切だと思います。

 

 白尾常務理事

 そうですね。自主的に取り組まないと何事も楽しくないですし、暗記主体の受験勉強は辛いですからね。数学や物理など、何のために勉強するかわからいと言われる方も多いですが、人生の中でその先の教養を活かすために重要であることは間違いありません。

 

 冷牟田理事長

 日本でトップと言われる東京大学でも、世界に目を向ければ危機感を感じていると言います。いろいろとある中でも、後れを取っているのが英語だそうです。

 同大学は、2027年秋には学部と大学院修士課程にまたがる5年一貫の新教育課程を設置し、世界基準に合わせて授業を英語で行うとのことです。

英語ができなければ国際人としての資質を問われるということでしょうか。

 太田教授

 英語教育で重要なのが、音のインプットです。現在、中学1年程度の内容が小学校5年生、6年生まで下りてきています。

 音声と映像が充実した英語教材(電子教材)も増えてきており、それをうまく活用していけば、非常に充実した授業ができるようになってきています。

 

 白尾常務理事

 英語の会話力を上げるために、最近はタブレットでネイティブの講師と会話を中心とした学習を行い、英検準2級合格を目指す取り組みが進んでいるようです。

 

太田教授

 英語教育の素晴らしさは、共通の言語を持つ事で、言葉の壁を越えグローバルに活躍できることだと思います。

 

 冷牟田理事長

 英語ができるかどうかで重要なのは慣れであって、使わなければ忘れてしまうので普段から英語を使う環境は重要だと思います。

 

 太田教授

 外国で暮らす時だけではなく、英語科の教員や企業で海外との商談などをするときにも英語が必要となっています。このように考えると、普段の生活の中には英語が溢れ、必要であると言えます。

 

 冷牟田理事長

 英語の学習だけではなく、子供たちの教育には家庭環境も大きく影響を及ぼすと考えています。環境が学習能力を左右するのであれば、保護者はその影響を考える必要があります。

 

 太田教授

 子供は家庭、社会、学校が連携して育てていくものです。しかし、家庭がベースとなるため、家庭の役割は大きなものとなります。

 

 冷牟田理事長

 教育熱心な保護者は、今のままではいけない。学校に任せきりではいけないと思う人も多く、教育格差が現実的に出てきているのではないでしょうか。

 

 白尾常務理事

 現実的に教育格差はあります。今後、行政が教育の無償化を進める可能性もあり、貧しくても平等に教育を受けることができれば、優秀な人材を育てることにもなります。

 

 冷牟田理事長

 本日は教育についての意見交換をさせていただきましたが、高学歴が素晴らしいのではなく、教養やコミュニケーション能力を身に着けておくことが重要で、人間はバランス、人間性が最も大切であると考えています。

 教育も福祉も「地域(社会)」、「家庭」、「施設(学校)」が相互に連携して成り立っています。そこに関わる人達を育てていくことの重要性を再認識する良い機会となりました。

 太田先生、本日は本当にありがとうございました。

 

おわりに

 教育と福祉、人が中心になって関わるといった意味では、どちらも似ているところが多いような気がしました。

 福祉分野でも職員教育は重要視されています。今回の意見交換会では、職員教育に関して多くのヒントをいただくことができました。今後の職員教育に生かせるよう努めて参ります。

 太田先生、ご多忙中にも関わらず意見交換会にご出席いただきましたこと、心より感謝申し上げます。

文責:総務課 星山